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「結婚していてもしていなくても、最後は必ずひとりになる。でも、知恵と工夫さえあれば、老後の一人暮らしは怖くない」と、謳ってベストセラーになった、上野千鶴子著「おひとりさまの老後」。上野千鶴子氏のファンで過去の著書は何冊も読んでいるのだが、高齢者を支援する立場から、この本だけは素直に読めなかった私に改めて考えさせられる本を先日読んだ。
タイトルがズバリ、沢村香苗著「老後ひとり難民」だ。「世はおひとりさまブームだが、『ひとり』のまま老後を迎えて本当に大丈夫だろうか?」と、警鐘をならす。配偶者や子供などの「身元保証人」がいない高齢者は、入院だけでなく、施設への入居を断れることも多い。認知機能や身体機能の低下が原因で起こる様々な老後の現実問題を提起した一冊になっている。
実際に、新規相談で依頼があった際に、イデアでも事前に確認する基本情報として「キーパーソン(身元保証人)」の有無を確認する事になっている。キーパーソン不在「おひとりさま」だと、困難事例の扱いになってしまうケースもある。もちろん、そうならないように事前の確認や関係機関との連携を密に図り支援に臨むわけだが、「おひとりさま」に対応できる「ケアマネ」もベテランのケアマネに委ねるなど対応は限られている。
実際に著書「老後ひとり難民」を読んだときに考えさせられたのだが、「介護保険は面倒を看る事のできる家族が居る事を前提に制度設計されている」という、沢村氏の指摘が秀逸だった。戦後、同じように創設された年金制度も老後は子供たち、同居家族の世話(扶養)になることを前提に制度を設計されている。そうでないと、老齢基礎年金だけで老後の独り暮らしができるはずもないのは明らかだ。
厚生労働省の構想では、市町村や社会福祉協議会(社協)などの相談窓口に「コーディネーター」を配置し、法律相談や終活支援、財産管理、死後の残置物処分等を委託できる民間業者へ繋ぐとしているが、民間業者も少なく値段もピンキリで法的な制度もされていない。例え契約が出来たとしても、「支払った金額に対して対価を感じられない」と、トラブルになるケースも多い。「もし、認知症なって意思決定が難しくなったら、体が言う事が利かなくなったら・・・」と考える事を、そもそも想像したくも無いという高齢者も多いのが、現場で働いていると実感として感じる(あくまで、私個人の意見です)。
身寄りがいない「おひとりさま」利用者の身元保証人の代わりの役割を誰が対応するのか?が、疑問になる。「病院受診に自分で行けなくなったら誰が連れて行ってくれるの?」「銀行から金銭の引き出しをするの?コンビニで公共料金の支払いを誰がしてくれるの?」「入院になったら誰が連帯保証人になるの?入院中の必要な物品や差し入れは誰が持ってくるの?」「自分が亡くなったら誰が住まいを、葬儀をしてくれるの?」と、答えはもちろん教科書に書いてある(はずだ)。
問題なのは、実際に誰が「社会資源に繋げる為の手続きをするのか」である。社会資源に繋げる前に、利用者から制度の説明と承諾を得る必要がある。制度や民間事業者に繋ぐともちろん費用も発生する。費用の面ももちろん説明する。すると、「お前(私:ケアマネ)に頼めばタダでやってくれるのだろう?」と、過去に言われたことも実際にあることも記しておきたい。又、「おひとりさま」を支援していて感じるのは家族(身元保証人)の役割は「ケアマネ」に丸投げすればよいという『無言の圧力』だ。例の一つとして「ケアマネが病院受診の付き添いをしれくれる」と、医療機関からも実際に言われた事がある。現場では実際に対応しているケアマネも多く業務の圧迫になっている。
国会では介護保険法の制度見直し時期になると「ケアマネも自己負担を導入するべき」という論調が挙がってくる。利用者から自己負担を頂くと、公正中立が保てなくなる云々の前に「ケアマネの業務の範囲内を明確にすべきだ」と、何年も前から思っていた。ようやく「ケアマネのシャドウワーク(業務範囲外の仕事)」を明確すべきだと論議が上がってきたのは喜ばしい事でもある一方で・・・「トイレットペーパーの芯を流したら便所が詰まったから直しに来い!」と、利用者に言われて仕事帰りに便所掃除に行ったことが昨日の事の様に思いかえされる私です。お後がよろしいようで・・・。
※参考文献:上野千鶴子著「おひとりさまの老後」、沢村香苗著「老後ひとり難民」、橘玲著、「D・D(どっちもどっち)論~解決できない問題~には理由がある